短編ホラー『Kの悲劇』
コロ助初の短編ホラー小説『Kの悲劇』
10月21日、その日は勝負の日だった。
勝負の朝、コロ助は心臓の高鳴りを抑えきれずにいた。
いつものように洗濯物を取り込んでいると台所の方から、『ガタン』という物音が。
ハンガーか何かが落ちたのだろうと、気にせずに顔を洗い始めるコロ助。
顔を洗いスマホを見ようとすると、シンクの横に置いたはずのスマホが見当たらない。
ふと視線を下に向けると、嫁が布巾を漂白しているオケの中に黒い物体が浮かんでいる。
「いやーーーー」
先ほどの物音はスマホが落ちた音だったのだ。コロ助は慌ててスマホを拾い上げ、ティッシュペーパーでスマホを拭き、恐る恐る電源を入れてみた。
反応がない。
『水没したスマホを復活させる裏ワザ』
おっ。もしかして復活できるかもしれない。
期待に胸を膨らませるコロ助。
なになに、すぐにバッテリーを外し、SIMカードを取り出し拭いてください。それからジップロップに乾燥剤と一緒に入れて水分がなくなるのを待ってくださいか。
すぐに実行しようとするコロ助。
しかしバッテリーの出し方が分からない。
SIMカードを出そうにも、取り出すための細いピンも見当たらない。
途方にくれるコロ助。
さらに文章の続きを見て絶句する。
『絶対に濡れた状態で電源を入れないでください。回路がショートします』
「いやーーーー」
電源入れてしまった。どうしよう。
よく見るとスマホのライトが光っている。
「いやーーーー」
コロ助「ねっ?ホラーでしょ?」
実況「これはへこみますよね。」
コロ助「もう朝から嫌な汗かきましたよ。菊花賞もテッコン君は出遅れるしドスローになるわでその日はもう最悪でしたよ。」
実況「スマホのデータとかも全滅ですよね?」
コロ助「全滅です。」
実況「あちゃー」
コロ助「あれも消えちゃったんだよね。」
実況「あれって?」
コロ助「逃げ馬のデータ。」
実況「いやーーーー」
コロ助「毎日コツコツ、スマホのエクセルに入力してきた半年分の逃げ馬のデータが消えちゃった。
コース別、クラス別の回収率も出して公表しろうとがんばってきたんだけど。」
実況「2ヶ月分の頑張りが一瞬でぱあですか。ほんまにどんまいです。」
コロ助「さすがに最初からやり直す気力はわかないですね。」
実況「それはそうでしょうね。」
コロ助「半年分ですが、ある程度データからわかることがあったのでそれは活かしていきたいです。」
実況「まあ完全にやってきたことが無駄じゃなくてよかったじゃないですか。」
コロ助「まあそうだけどね。スマホは修理に出して代替機を借りてるんだけどアプリとか全部入れないとダメだからめんどくさいのなんの。」
実況「それは仕方ないですよね。もう週末の競馬当てて発散しましょうよ。」
コロ助「そうだね。あっ!そうだ。嫁が起きて来て何て言ったか知ってる?」
実況「えっ?何て言ったんですか?」
嫁「あほちゃう?。修理代自分で払いや!」
実況「いやーーーー」
コロ助「ね?ホラーでしょ?」