たった一戦で伝説になった馬。へヴィータンク物語。
皆さんはあの馬のことは覚えているであろうか?
去年の弥生賞を走ったあの馬を?
そうそう。ダノンプレミアムとワグネリアンね。
ダノンプレミアムはここを快勝しましたが皐月賞を回避。ダービーでも1番人気になりました。
ワグネリアンもここはダノンプレミアムに完敗もダービーでは見事ダービー馬の栄光を掴み取りました。
って違うー。
弥生賞で大差の最下位になったあの馬だよ。
あの馬。
そう彼の名は
へヴィータンク。
去年の弥生賞はかなり注目を集める一戦であった。
朝日杯FSを無敗で勝利した3戦全勝の2歳王者ダノンプレミアム。
こちらも3戦全勝で重賞を勝っているワグネリアン。
前走シクラメン賞を圧勝し、名門藤沢厩舎送り込む鞍上ルメール騎手のオブセッション。
さらにホープフルS2着で母がビリーブ良血ジャンダルム。
無敗馬達の戦い。
誰かが無敗ではなくなってしまう。
そんな顔ぶれの中1頭未出走馬の名前があった。
そう。それがヘヴィータンクである。
本来は重賞競走には未勝利馬は出走することが出来ない。
しかしJRAの規定では2歳重賞と3歳春クラシックのトライアル競走には未勝利馬でも出走できるのである。森調教師はこのルールの盲点をついてきたのである。
皐月賞のトライアルレースなので3着以内に入れれば皐月賞の優先出走権が得られる。
しかし本賞金を持たない馬は皐月賞に出られないのである。
だが2着までに入れば本賞金が加算できる。つまり2着に入れば皐月賞に出走でき、史上初の初勝利がG1勝ちという可能性が出てきたのだ。
これには競馬民はざわざわしたのは言うまでもない。
競馬民はこういうのが大好物なのだ。
「弥生賞に未出走馬?」
「遅れてきた大物か?」
「これは2着に入って未勝利で皐月賞制覇する伝説の馬になるのか?」
しかし調教タイムから見ても、常識的に見ても通用する可能性は低かった。
それは単勝人気からも明らかであった。
単勝194倍。
それが彼に示された現実だった。
10頭中9番人気。
そうへヴィータンクより人気のない馬もいたのである。
この馬の名前がわかる人は相当なマニアだろう。
この馬の名前はアラウン。
この馬がどうなったのかは語ると長くなるのでまたの機会にしよう。
結果は2,23,9で大差のシンガリ負け。
ダノンプレミアムのタイムが2,01,0なのでダノンプレミアムがゴールしてから約23秒後にゴールしたことになる。
へヴィータンクがゴールする時には拍手をするファンもいたようである。
遅いながらに最後まで必死に走るへヴィータンク。
実際に見たファンには彼の勇姿がどのように写ったのだろうか?
こうして史上初の未勝利馬によるクラシック制覇の偉業の夢は絶たれた。
このへヴィータンク。次はどこに使ってくるのか注目されていたがこのまま引退することとなった。
未勝利馬の初戦が重賞。そして一戦での引退。
こうしてへヴィータンクは記録よりも記憶に残る馬となったのであった。
弥生賞の季節になる度にへヴィータンクの名前を思い出して欲しい。
競馬はスターホースだけではないのだ。
無名の馬、弱い馬がいるから相対的に強い馬が輝くのである。